双極性障害(躁うつ病)

双極性障害とは

私たちには、誰にでも気分のいい日、良くない日があります。しかし、そういった誰にでもあるような気分の浮き沈みではなく、社会生活をする上で困難となるほど気分が上ずった状態(躁病相)や、生きていくのも辛くなるような憂うつ状態(うつ病相)を繰り返す方々がいらっしゃいます。これが双極性障害(躁うつ病)です。

双極性障害は診断が難しい

双極性障害の診断は難しいといわれています。なぜならば、双極性障害の経過は、多くの場合安定している時期とうつ病相が多くを占めるため、結果として躁病相が見逃されることが多いからです。躁病相を見逃してしまうと、その方はうつ病と診断されることになり、おそらくは抗うつ薬による治療を受けることになります。しかし、後述しますが、双極性障害の方への抗うつ薬の効果は疑問視されており、場合によっては状態を悪化させることもあります。ですから、軽躁病相、躁病相を見逃さないようにしっかりと診断していくことが必要です。

一方で、近年、上述した双極性障害の見逃しが強調されるあまり、本来双極性障害でない方を双極性障害と診断してしまう現象も指摘されています。

双極性障害の薬物療法

双極性障害の治療は薬物療法が主軸となります。日々、世界中から新たな研究結果が報告され、精神科の薬物療法は変遷を重ねていますが、その中でも双極性障害に対する薬物療法は、近年大きく変化してきたもののひとつです。

一例を挙げます。双極性障害とは、「躁状態」と呼ばれる気分が高ぶったとき、「うつ状態」と呼ばれる気分が低下したときが、交代して起こる病気です。少し前までは気分の波を抑えるために、リチウムなどの「気分安定薬」を基本として、躁状態が悪化したときには抗精神病薬を、うつ状態が悪化したときには抗うつ薬を、場合によっては併用、もしくは気分安定薬から切り替えることが普通でした。

しかし、近年の研究により、たとえうつ状態だったとしても、双極性障害の方に抗うつ薬を使用してしまうと一気に重度の躁状態になったり、気分の波をかえって複雑にしてしまったりするリスクが指摘されています。また、うつ状態だったとしても、ある種の抗精神病薬を使用すれば、うつ状態の改善に寄与することを示す研究も出てきており、わが国でもある種の抗精神病薬が双極性障害におけるうつ状態に対して保険適応となっています。

一方で、双極性障害には、双極I型障害と、双極II型障害があります。さらに、議論はあるのですが、双極II型よりさらにゆるやかな気分の波を示すタイプの方々も双極性障害の仲間と考えてよいという意見もあります。多くの質の高い研究は双極I型障害を対象としたものであり、それ以外のタイプについての研究は、実はあまり多くありません。ゆえに、例えば双極II型障害の方に抗うつ薬を使用することが絶対に間違ったことかというと、そうとは言い切れないのが現状なのです。

ですから、しっかりとした診断に基づいて、最新の研究・ガイドラインに目を通した上で、何よりも目の前の患者さんの状態・ニーズに見合った薬物の選択が必要となります。副作用についても、しっかりとしたモニタリングが必要です。

当クリニックにおける双極性障害の治療

上述したように双極性障害の診断は、時に非常に難しいものとなります。診察室における状態だけでなく、自宅・職場での様子、睡眠・生活パターン、これまでの生活歴など、できるだけ多くの情報を伺って、診断の精度を高めるように努めます。

治療は薬物療法を主軸とします。診断、最新の研究、患者さんのニーズ・背景を総合的に判断した上で、最適な処方を提案させて頂きます。また、定期的な血液検査などにより、副作用のモニタリングも行っていきます。

双極性障害は時には入院を考慮する状態となりうる精神障害です。場合によっては入院施設を保持する精神科病院などの医療機関で治療を受けたほうがベターな方もいらっしゃいます。この場合は、理由をしっかりと説明した上で、近隣の精神科病院を紹介させていただきます。